「エアコンをつけてくれませんか」

日本語教師こぼれ話
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 日本語教師の最も嬉しい瞬間のひとつに、「学生が学んだことを使えるようになったとき」が挙げられると思います。特に、私が現在担当している学生は、ひらがなから始めた初級クラスなので、日々著しく日本語力が伸びていくのが見てとれます。
 そして、学生にこそ自分自身の成長を感じて喜んでもらいたいので、新しく学習した文型はなるべくすぐに実際の場面で使うように促しています。
 例えば、先日「~てくれませんか」という依頼の表現を学習しました。その時は、梅雨の真っただ中だったので、教室が蒸し暑く、一日に一度必ず学生にエアコンの温度の操作を頼まれていました。
 初級の学生は、「先生、ちょっと暑い」や「先生、エアコン…」などと短い言葉で何とか伝えようと話します。それで、「ああ、暑いから温度を下げてほしいのかな」と察してしまい、エアコンを操作したくなるのですが、ぐっと我慢をすることにしていました。「そうですね。暑いですね」、「そうですね。エアコンがありますね」と言うので、少し(かなり?)意地悪にも聞こえますが、こういうときこそ実生活に必要な日本語が自然に出てくる瞬間ですから、じっと待ちます。
 すると、学生が「エアコンをつけてください。」ときちんとした文で言います。ただ、もう一歩踏み込んで、他の言い方を覚えているか問いかけます。すると、学生から「先生、ちょっと暑いんですが、エアコンをつけてくれませんか。」と学んだ文型が出てくるのです。
 小さいことですが、こういったことの積み重ねや、何度もそれを使う状況に出会うことで、学生はしっかり文型や言葉を覚えていきます。
 自ら言いたいことが言えて、それが伝わったときの満足そうな学生の顔を見るのがとても嬉しい今日この頃。
 次は「エアコンをつけていただけませんか。」の勉強が待っています。
(阿部)