以前、中国の学生を担当していた時、答え合わせで間違えた学生に理解度を確認したり、体調を尋ねたりするときに「大丈夫?」と声をかけるのですが、その中には首を横に振りながら「大丈夫。」と答える学生がいました。どう考えても質問の「大丈夫?」に対する同意である「大丈夫。」なのに、なぜジェスチャーが否定なのか、なぜ首を横に振るのかと疑問に思っていました。
ある日、中国の学生向けのビジネス日本語の授業で、ケーススタディを取り上げていた時です。あるケースについての評価を学生に尋ねたところ、首を横に振りながら「問題ない、大丈夫、大丈夫」と答えました。授業が終わってから、その答え方がどこかで見た光景だなぁと気になっていると、あの疑問を思い出したのです。そこで、この「問題ない、大丈夫」のことを中国語が母語のスタッフにも聞いてみたところ、「問題ない」は中国語で「没问题」(メイウェンティ)と言うようで、「没」は否定の言葉で、首を横に振るのが自然なのだそうです。また「大丈夫」と言うときに、「問題ない」とセットで言うこともあるということでした。
以前、学生が首を横に振って「大丈夫」と答えたのは、心の中では「問題ない、大丈夫」と言いたかったのかもしれないなと、あの時の疑問が少し解けた気がしました。日本語学校の教室は異文化に触れられる場であることを改めて認識しました。(高田)