「先生が桃太郎と浦島太郎を教えてくれたおかげで、日本人の会話についていけました。」
これは卒業生のAさんから受けた報告です。
読解の授業で、いつもの教科書ではなく、特別に昔話の「桃太郎」と「浦島太郎」を読んでもらったことがあります。日本人なら誰もが知っているこの二つの昔話を、日本語を学ぶ学生たちにも知ってほしいと思ったからです(ちょうど携帯電話のCMの「三太郎」が話題になっている頃でした)。学生たちは「初めて読みました」と新鮮な表情で、楽しそうに読んでいました。
その約1年半後。Aさんが日本人の知人のお子さんに会った際、「髪型が桃太郎みたいでかわいいですね」と言ったら、「え、桃太郎、知ってるの?」と驚かれたそうです。
また、別の日に、日本人の友人達とゲームをしていたら、ゲームに浦島太郎が出てきたそうです。友人に「Aさんは浦島太郎、知らないかな?」と言われたそうですが、Aさんは「知っているよ」と答え、そのまま友人達の話題についていけたそうです。
「日本語を教える」と聞くと、「語学力を上げる」とだけ考えてしまいがちですが、文化について説明したり、背景知識を与えていったりすることも「日本語を教える」ということだと言えるのかもしれません。
今日の授業が未来の学生たちのコミュニケーションの場面で役立ちます。そう思うと、授業準備に力が入ります。(阿部)