手品を使って意味を理解させる

日本語教師こぼれ話
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 文法の授業で教師が一番頭を悩ますのは導入の部分です。これから学習する文型がどんな意味で、誰が、どんな時使うか、どんな機能があるかなどを、具体的な状況を提示して学生に理解させます。導入がスムーズにいくかどうかで、その後の授業に対する学生の集中度が全く違ってきます。

 以前、初級の授業で「~ておきます」の導入をしたときのこと。簡単なトランプの手品を学生に見せて、ちょっと驚かせた後に「ハートのAはここに置いておきました。」と種を明かして文型の導入と運用理解につなげた時は、学生は大きな拍手で喜んでくれました。

 分かりやすい導入や説明や例を考え、それを示すことで学生が理解してくれた時には、日本語を教える楽しさと喜びがこみあげてきます。

 もちろん、毎回導入が成功するわけではなく、懸命に考えた導入でも「先生、わかりません」と言われ、授業がストップしてしまうこともあります。そういう時は冷や汗をかきながら、例文をいろいろ並べ、状況を粘り強く説明するようにしています。

日本人が当たり前に使っている言葉が学生にとっては「なぜ」「どうして」の塊なのがとても面白いです。これからもたまには手品を使って、学生に言葉の意味を伝えていきたいと思います。 (水谷)