第406回 D言葉とS言葉(3)

日本語の美しさ
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「だって」「だけど」「だったら」「でも」「ですから」「どうせ」といったD言葉が、言い訳がましさや上から目線といったネガティブな印象を与えるのに対して、「すみません」「失礼しました」といったS言葉は、謝罪や、まずは相手の主張を認める姿勢を示す働きを持っています。

もちろん、非がないのに謝罪するのには抵抗がある、と考える人もいるでしょうが、ちょっとした言葉遣いが相手を逆上させるということに気をつけることが必要な場合もあるでしょう。例えば、クレーム対応をする場合です。初期の対応でうっかりD言葉を使ってしまい、相手を怒らせてしまうと、あとあとに尾を引く場合もあります。こちらに正当な理由がある場合でも、こちらの対応が相手の心証を害したということに対してまずは謝罪して、その上でこちらの主張を伝える、そうすれば相手はこちらの主張を受け入れやすくなり、いい結果をもたらす可能性もあります。こうした姿勢は、相手を立てるという日本的マナーの真髄にも通じることです。

或いは、電車の人身事故が原因で出社の時間や約束の時間に遅れてしまった、といった、もっと日常的な場面でも同じです。遅れた原因は人身事故にあるわけで、決して自分に非があるわけではありません。それでもこうした時に「だって人身で電車が遅れちゃって……」とか、「だから、電車が遅れたって言ってるでしょう」などと声高に言うよりは、「すみません、事故で電車が遅れてしまいまして」と言ったほうが、周囲の人も「それは大変でしたね」と言う気持ちになるでしょう。

(に)つづく