第402回 連濁(3)

日本語の美しさ
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「上蓋」「渋柿」では「うわぶた」「しぶがき」と連濁が起きるのに対して、「値札」「合い鍵」は「ねぶだ」「あいがぎ」とはならず、「ねふだ」「あいかぎ」のように連濁が起こらないのはなぜでしょうか。複合語の後ろの言葉に注目してみましょう。連濁が起こる場合、後ろの言葉は元々「ふた」「かき」のように濁音が含まれていない語です。一方、連濁が起こらない語の場合、後ろの言葉は「ふだ」「かぎ」のように元々濁音を含んだ言葉だということが分かります。参考に他の言葉でも見てみましょう。

数珠玉(じゅずだま:連濁する)・数珠繋ぎ(じゅずつなぎ:連濁しない)
大通り(おおどおり:連濁する)・大蜥蜴(おおとかげ:連濁しない)
茹で蛸(ゆでだこ:連濁する)・茹で卵(ゆでたまご:連濁しない)
女心(おんなごころ:連濁する)・女言葉(おんなことば:連濁しない)

このように、「後ろの言葉に元々濁音がある場合、連濁は起こらない」という規則性は、19世紀末、北海道の地質調査に従事したアメリカ人の鉱山学者ライマンによって提唱され、「ライマンの法則」と呼ばれています。この規則性は、1語の中に濁音が複数あるのを嫌う和語の性質によるものだと言われています。

み)つづく