第356回 うさぎはおいしい?(3)~復興を願って~

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「かのやま」、「かのかわ」はどのように解釈していたかというと、「蚊の山」、「蚊の川」です。山や川は蚊が多いから「かの」は「蚊の」だろうと思っていました。小学生のころ、父親と鮎釣りに行き、蚊やブヨにずいぶん悩まされました。特に川というとその時の蚊やブヨが思い出され、「かの~」は「蚊の~」と解釈するのが私には自然でした。

さて、「かの」は何か。「か」は代名詞で「彼」と書き、「彼の」で「あの」という意味です。そうすると昔のことを回想していることがわかります。

「ゆめはいまもめぐりて」ですが、その当時、「ゆめ」は「夢」、「いまも」は「今も」で、「めぐりて」も「巡って」だと解釈できました。でも、「兎美味し、蚊の山」、「小鮒釣り師、蚊の川」と解釈している小学生の私には、何の「夢」が「巡る」のかわかりません。でも、「兎追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川」であれば、「ゆめはいまもめぐりて」は、昔のふるさとの光景が今でも夢の中に出てくるのだと理解できます。

ちなみに「巡りて」ですが、現代語の文法では、「巡って」です。存在を表わす動詞「ある(あり)」が「て(接続助詞)」につく場合、現代語の文法では「あって」ですが、古典文法では「ありて」です。本来は「巡りて」「ありて」だったものが発音しやすいように音変化を起こし、「巡って」「あって」となったのです。この変化は音便と言います。(よ)

つづく