第355回 うさぎはおいしい?(2)~復興を願って~

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「ふるさと」の歌詞は以下のとおりです。

うさぎおいしかのやま
こぶなつりしかのかわ
ゆめはいまもめぐりて
わすれがたきふるさと

「うさぎおいし」「こぶなつりし」の「し」は何か。小学生のころは、「うさぎおいし」「おいし」は「おいしい」の「い」が落ちたもの、「こぶなつりし」の「つりし」は「釣り師」だと思っていました。私はその当時釣りが趣味だったので、「こぶな(小鮒)」は問題なく理解できましたし、「釣り師」という言葉も知っていました。つまり、「し」はそれぞれ「おいしい」という形容詞の語幹(変化する際に形の変わらない部分)末の音、「師」と考えていたのです。

この「し」は、「き」という過去を表わす助動詞の連体形(名詞が続く形)です。そして、過去のことの中でも直接体験したことを回想するときに使います。このようなことばだとわかると、「うさぎおいし」、「こぶなつりし」は、「兎を追ったこと」、「小鮒を釣ったこと」を思い出しているということがわかります。

さて、「し」は「き」の連体形ですから、どのような名詞に続くか。「かのやま」、「かのかわ」に続くわけですが、これらの表現も小学生の私にとって知っていることばを当てはめて解釈するしかありませんでした。(よ)

つづく