アニメ「クレヨンしんちゃん」の主人公、5歳の幼稚園児「野原しんのすけ(しんちゃん)」が、父親である「野原ひろし」に「『ジジイは小説よりいきなり』って何?」と聞いたシーンがありました。これは「事実は小説より奇なり」を、しんちゃんが自分なりに聞き取って質問したシーンです。理解不可能な表現を自分の知っているボキャブラリーや知識で解釈しようということは、大人でもよくあることです。だだ、子どもの場合は、ボキャブラリーや知識が大人よりも少ないので、珍解釈になることが多くあります。
私も小学生の音楽の時間にいろいろな歌を覚えましたが、歌詞が理解できないものも多くありました。その一つが「ふるさと」(作詞者は高野辰之、作曲者は岡野貞一)です。私もしんちゃんと同様に“うさぎおいし~”、「ふるさとでは兎がおいしい?いや、もしかして兎をおんぶしている?」などと勝手に自分の知っている言葉を当てはめていました。
「うさぎおいし」は「兎を追った」という意味ですが、そもそも「兎を追う」とはどういうことなのか。「高野辰之記念館」のホームページには「兎追いは、自然豊かな山村の冬季間の子どもたちも加わった村総出の行事でした。」とあります。さらに、今年の2月に亡くなった動物学者の千石正一さんは「子どもなりの食料確保の手伝いの情景であって、兎を追いかけて単に遊んでいるのではない。動物性蛋白質の不足がちな、かつての農山村ではふつうの光景であった。」(ダイヤモンド・オンライン)と述べています。つまり、「うさぎおいし」は冬に行われた村の行事で、“野うさぎのハンティング”だったというわけです。
この歌は東日本大震災の復興コンサートでよく歌われています。今回は、被災地の復興を願って、唱歌「ふるさと」を、主に日本語の面からちょっと深く理解してみたいと思います。(よ)
つづく