第332回 フォリナートーク、ティーチャートーク(2)

日本語の美しさ
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ティーチャートークがなぜ問題視されることがあるかというと、それが不自然な日本語だからです。「皆さん、おはようございます。今日は、何曜日ですか。そうですね。月曜日ですね。皆さんは週末、何をしましたか。Aさん、Aさんは週末、何をしましたか。」これは、初級のクラスではよくある教師の発話です。日本語の教室ではよく使われている日本語でも、一般の人がこのような発話をすることはないでしょう。このように、日本語教師はちょっと特殊な話し方をすることがあるのです。それは、目の前の学習者の日本語能力を把握しているために、自然な日本語で話してしまうと学習者たちが理解できないことを知っているからです。「相手がわかるように話す」結果、ティーチャートークになるわけです。

だとすると、問題視の必要はなさそうですが、大切なのは、教師がどのような意識でティーチャートークをしているかなのです。例えば、日本語の勉強を始めたばかりの学習者たちのクラスでは、上の例のような発話を教師がするのは大きな問題ではありませんが、十分に日本語力のある学習者たちのクラスでも同じように発話していたら、それは問題です。ティーチャートークばかり耳にしている学習者は、普通の日本語に慣れるチャンスがないからです。自然な日本語を教えることは、日本語教師の大切な役割です。(こ)つづく