ある日本語教師養成講座のクラスで女性の受講生に「旦那さん/彼、やさしくて、すてきだね。」とほめられたらどうするかと聞いてみました。すると、「とんでもない。」とか「知らないだけですよ。」などと否定的な表現で答えるという人がほとんどでした。
私の家内も他の人に対して否定的な表現を使って私を落とすだけ落とします。「家じゃ、何もしない/自分勝手だ/ぜんぜんやさしくない・・・」などと、傍で聞いていると、半分当たっているけど、そこまで言わなくてもいいじゃないかと思います。
日本語には「愚妻、愚息、愚兄、愚弟、愚妹」など身内をへりくだって表現することばがあります。それにしても「愚~」とはかなりのへりくだりようです。ちなみに、先ほどのクラスの受講生に「うちの愚妻です。」と他の人に紹介されたらどうするかと尋ねてみました。すると、回答者の全員が旦那様を「絶対に許さない」などという厳しい反応を示しました。日本には謙遜の文化があるとわかっていても、実際にへりくだりの表現で言われる身になってみれば、おもしろくないと感じる人も多いと思います。
一方、国によっては“身内を他の人に自慢することが普通”の文化があります。そのような文化の人が日本人と身内の話をすると会話がかみあわなくなることがあります。ある外国人が自分の弟を「自慢の弟」だと日本人に話したところ、話し相手の日本人は途惑った表情をして、会話が進まなかったと言っていました。
(吉)