第289回 うなずき5

日本語の美しさ
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日本語を学ぶ外国人のクラスでは、敢えてうなずきやあいづちの練習をすることがあります。どんなに日本語が文法的に正しく話せても、態度が日本語を母語とする人のものとかけ離れていると、日本語母語話者にとっては違和感のもとになるからです。私たちにとっては難なくできるうなずきやあいづちも、それらに慣れていない人たちにとっては、すぐにできるものではありません。「話し手は一気にしゃべろうとしないで、『ね』『よ』といった助詞を交えてちょっと間を取りながら話す」、「聞き手は話し手の言葉が途切れたら「はい」「ええ」「そうですか」などのあいづちを打ってうなずく」、のように説明し、練習に入ります。「あのですね」「ええ(うなずき)」「きのうですね」「ええ(うなずき)」「デパートに行ったんですよ」「そうですか(うなずき)」といった練習をすることになるのですが、文字にするとまどろっこしく感じられるものを、日本人は自然にやっているのです。

このように、うなずきやあいづちには文化による違いがあります。うなずきやあいづちを多用する私たちはこれらを大切にするとともに、多くの外国人にとってなかなか難しいものであることも理解できるといいですね。そうすれば、「この人、なんで私の顔をじっと見て話を聞いてるんだろ。怒ってるのかしら」といった誤解も起こりにくくなるからです。皆さんも機会があったら、外国の人たちが会話している様子を観察してみてください。 (こ)

<参考文献>
・『心を伝える日本語講座』水谷信子 研究社 1999
・「日本語におけるあいづち研究の概観及びその展望」陳 姿菁『言語文化と日本語教育2002年5月特集号』
・「ポライトネス・ストラテジーとしての聞き手のうなずき」宮崎幸江『上智短大紀要29号』2009