第118回 お酒にまつわる言葉5

日本語の美しさ
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「今夜は堅苦しいことは言わないで無礼講でやろう!」といった上司や先輩の発声で飲み会が始まることがありますが、「無礼講」の由来とは何でしょうか。

元々、「講」というのは、中世中頃以降、民衆の間で作られた仏事や神事を行うための結社のことです。

日本史で「建武の新政」の中心人物として登場する後醍醐天皇は、鎌倉幕府打倒の策略を練るために相談する際、内容が外に漏れることのないよう、身分関係を抜きにしてハメを外した酒宴を催しました。その様を見て驚いた人々が「無礼講」と呼んだのが始まりとされています。

ちなみに、酒席で酒を勧められた人が「すみません、下戸なんで・・・」と言って断る場合がありますが、酒が飲める人を「上戸」、飲めない人を「下戸」と呼ぶのも史実に基づいています。

701年に発布された大宝律令では、成年男子が6人から8人いる家を上戸、4人または5人いる家を中戸、3人までの家を下戸と呼びました。それが転じ て、働き手が多くいる家は経済的に豊かであるということから、祝宴の折に酒を多く振舞える家を「上戸」と呼ぶようになり、酒を多く飲む「上戸」、あまり飲めない「下戸」になったことに由来すると言われています。(に)

<参考文献>
・『お酒に関する言葉の豆辞典』  http://www2s.biglobe.ne.jp/~aoshima/jiten.htm#kuda
・月桂冠㈱『お酒の博物誌』 http://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/encyclopedia/index.html
・ 大雪渓酒造㈱『日本酒あれこれ』   http://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/encyclopedia/index.html
・『古事記 全訳注』(上)・(中)・(下)、次田真幸著、講談社学術文庫
・『全現代語訳 日本書紀』上巻、宇治谷孟著、講談社学術文庫