第117回 お酒にまつわる言葉4

日本語の美しさ
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「その場に、ある事態を出現させる」という意味を持つ「醸す(かもす)」という言葉があります。「物議を醸す」というように使われますが、この「醸す」 にも「酒」という漢字の部首「酉」が使われています。元々お酒を醸造することを表す言葉ですが、この「醸す」は「噛みす(かみす)」から転じた言葉だという説があります。『日本書紀』の中には、アマテラスオオミカミの孫であるニニギノミコトの后(きさき)コノハナノサクヤヒメがヒコホホデミノミコト(山幸 彦)を産んだ時、そのお祝いに天のたむけ酒を噛まれたという逸話が残されています。「酒を噛む(かむ)」とは、炊いた米を口で噛んで、壷の中に吐き貯めて 唾液の糖化作用を利用して酒を作る手法を表しており、こうして出来た「口噛み酒」は、メキシコやアマゾン、台湾など環太平洋の各地に存在したとされていま すが、この「噛みす」から「醸す」が生まれたというわけです。ちなみに、妻を表す「かみさん」という言葉は、家で酒を醸す役割を女性が担っていたことから 生まれた言葉だとされています。(に)