日本語学校で学生と接していると、様々な質問が出てきます。その場でさっと答えられるものもありますが、正直、「うっ」と詰まってしまう質問も多いです。その一つとして、「先生、“眠る”と“寝る”は何が違いますか?」という質問がありました。
質問が起こった時の状況はこうです。学生たちに「映画を見た後」という状況での会話練習をさせていたところ、
A:とっても面白かったですね。私、感動して泣きそうになりました!
B:え、そうですか?私はつまらなくて、眠りそうになりましたよ。
という会話が出ました。すると、ほかの学生から「眠りそう?寝そう?」という疑問の声が上がり、そしてついに先に挙げた質問が出てきました。もちろん、私は「うっ」となりました。日常生活の中で「眠る」と「寝る」の違いについて考える日本人がどれほどいるでしょうか。その場では答えることができなかったため、「これは私の宿題にします」と伝え、授業後に意味の違いを調べてみました。すると、「眠る」とは意識がない状態のことであり、「寝る」とは横になっている状態だということが分かりましたので、次の授業でイラストを用いながら学生たちに説明しました。
日本語教師にはこのようなことが日常的に起こります。しかし、これが案外楽しかったりするのです。私たちが普段何気なく使っている日本語や、知らなかった日本語を、学生たちからの質問でもっと知ることができる。こんな職業があるでしょうか。日本語教師とは学生に日本語を教える職業ですが、それと同時に、日本人が知らなかった日本語と出会えることができる職業なのです。(山内)