私が日本語教師をしている実感が湧くのは、宿題のチェックをしている時です。私が担当する初級クラスでは、ワークブックという文法ドリルが宿題として出ます。各課が終わるごとにクラス分をチェックするもので、なかなか時間と手間のかかる作業です。ただ、授業中では得られない気づきもあります。
一つは、学生一人一人の様子です。この学生はこういう字を書き、こういう書き間違えをするんだということから、この学生はいつも頑張っているのに、今日は空欄が多いな、何かあったのかな?という生活面さえ気になったりします。
二つ目は、クラス全体の傾向を確認できることです。予想外のミスの発見やみんなが同じ表現でつまずいているのを見て、意味用法が定着していないことが把握できます。
思わずクスッとしてしまう間違えもあります。例えば、どうしても「ろ」が「る」になる学生。「国」と書くべきところを、「わたしのにくは、広くて大きいです。」と書いてしまう学生。授業中は控え目なのに作文では大胆な学生…。初級なので使用語彙や表現は限られますが、不思議と個性が出てくるところが面白いです。
根気よく間違えの指摘を積み重ねていくうちに、気づいたら学生は日本語力をつけており、そこに嬉しさも感じます。日本語教師を目指していた頃、こんな地道な作業でやりがいを感じるとは思いませんでした。この仕事は、教師個人個人が経験してきたことが活かせると言われますが、やりがいを感じる場面も十人十色だなと思います。(岡本)