「夏休み明け不登校?」

日本語教師こぼれ話
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 ネットで「夏休み明け」を入れると「夏休み不登校」という検索ワードがすぐ出てくる。夏休み明けの学校や仕事を考えると憂うつな気分になる人が多いようだ。初日の出勤をぐずぐずしているわたしは「学生たちもきっと嫌々ながら学校に向かってるんだろうな」と勝手に共感し、そこで思わずため息が出た。
 脳裏に浮かんできたのは、夏休み前の追い詰められた学生たちの深刻そうな顔だった。宿題やテスト、進学のことなどで日々追われていて、学生同士の間では日本語を使って会話するどころか、中国語での会話もほとんどなかった。

 一ヶ月ぶりの教室の外に立ち深呼吸をする。「よーし!」楽しい雰囲気を作ってみんなのモチベーションを上げていこうと心の準備をして教室のドアを開けた。
 その途端、わたしの目と耳に飛び込んできたのは見たことのない笑顔と学生からの「ワ~」という歓声だった。
驚いた。みんな生き生きしている。
 学生たちは競い合うようにわたしに話しかけてくる。夏休み中に行った場所、食べたもの、見た光景を楽しそうに伝えようとしている。日本語を一生懸命使おうとする姿にわたしは感動した。

 適度な緊張感は必要だが、時には学習者に余裕を持たせることは日本をもっと好きになるきっかけとなり、それもまたモチベーションにつながるということをこの時実感した。(尹)