「日本で、どこへ行きたいですか?」 初級のクラスでは定番のこの質問に、クウェートから技術研修生としてやってきた彼はこう答えました。
「刑務所です。」
「……。刑務所ですか? 」
「はい。日本へ来る前から、ずっと楽しみにしていました。」
(へえ、珍しい趣味があるんだなあ。まあ、世の中いろんな人がいるし……。)
でもなぜ日本に来て刑務所なのか。どうしても気になった私は、一週間後、再び彼に尋ねました。
「どうして刑務所へ行きたいんですか?」
「国でも有名です。私の友達もみんな行きたいと言っています。」
刑務所について話す彼は満面の笑顔。でも私の疑問は深まるばかり。
「どこの刑務所へ行きたいんですか?」
「東京刑務所です。」
(……!?そんな刑務所、あったっけ?)
さらに2週間後の月曜日。
「先生、週末、東京刑務所へ行ってきました。」
彼は興奮冷めやらぬといった感じです。
「東京刑務所は、どこにあるんですか?」
「ええと……マクハリ……」
(幕張!?)
「刑務所に何がありましたか?」
「新しいPSP!!それから、ニンテンドーの……」
(刑務所に任天堂?)
「……。○○さんは、どこへ行ったんですか?」
「東京ケームショです。」
(あっ!!)
「東京ゲームショー、ですか?」
「はい!」
1ヶ月にわたって続いたちぐはぐな会話。正しい発音を教えることも、日本語教師の大切な仕事です。(勝間田)