外国人学習者に「もの」という抽象的な言葉の意味を説明するにはどうすればよいでしょうか。国語辞典の説明をそのまま引用しても納得してくれそうにないことは、前回お話しした通りです。
そこで今度は『日本語文型辞典』という辞典を調べてみます。この辞典はある程度の日本語が理解できる外国人学習者が日本語を学ぶ際に参照する辞典です。この辞典の「もの」の部分を見てみると、「1.もの<物体>」とあり、あとはひたすら例文が並べられています。「(1)この部屋にはいろいろなものがある。/(2)何かすぐ食べられるものがあれば、それでいい。/(3)どうぞ、すきなものをとってください。/(4)赤ちゃんは、動かないものには興味を示さない。」といった具合です。学習者が「もの」のような抽象的な名詞を理解するためには、こういった例文がたくさん必要です。学習者は具体的な例文の中から、それぞれの「もの」の共通要素を探し、それを手がかりとして意味を類推をするからです。まず最初に説明ありきの国語辞典とはだいぶ違います。(田)つづく