先日、家内とあるオーケストラの演奏会を聞きに行ったときのことです。開演前にロビーで家内とコーヒーを飲んでいると、音楽大学に通う息子がお世話になっている先生がいました。そこで、日ごろ息子がお世話になっているお礼をしようと思い、家内とその先生のところへ行きました。
私たち:○○先生、○○音大でお世話になっている○○ですが。
先生:あ、○○君の。
私たち:息子がいつもお世話になりまして、ありがとうございます。
先生:○○君、頑張っていますよ。成績も優秀で。
私たち:いや、とんでもない。基礎がまだまだしっかりしていませんし。
挨拶が終わると、以前日本語教師をしていた家内が「ずいぶん日本的な会話をしちゃったね。」と笑いながら言いました。「成績も優秀で」と持ち上げられれば、「いや、とんでもない」と否定をする。日本人同士の会話を振り返ってみると、自分や身内にかかわるものごとについて否定し、へりくだることがよくあります。
もしも先の会話で私たちが「いや、とんでもない。」と言うかわりに、「そうですか。私たちにとっても自慢の息子で。」などと言ったら、おそらく先生はその表現に違和感を覚えると思います。それは日本語では自分や身内あるいはそれにかかわるものごとをほめられたら、普通はそれを否定し、へりくだるという謙遜の文化があるからです。
[注]:先生の発話にある「成績も優秀で。」は、親の立場からすると事実に反する発話内容であること申し上げておきます。
(吉)