Yahooで“This is a pen”を検索にかけてみると、荒井注(あらい・ちゅう)がトップに出てきます。これはドリフターズの初期のメンバーである荒井注の代表的なギャグだったからです(志村けんは荒井注が脱退後に正式メンバーとなります)。では、どのような場面でこのギャグが出てきたかというと、英語を話すシーンのコントです。そこに荒井注が出てきてどんな場面でも“This is a pen.”の一言で済ませるのです。例えば、国際会議のコントで議論は英語が用いられています。日本の代表として荒井注が出席しており、他国の参加者から“Japan.”と言われ発言を求められます。そこで荒井注はゆっくりと立ち上がり、落ち着いた様子で“This is a pen.”と述べるのです。
この“This is a pen.”は、荒井注のおかげで、英語を習う前の小学生にも定着しました。
当時の小学生は、外国人を見かけると、「あそこに“This is a pen”がいるぞ。」と言ったり、外国人に向かって“This is a pen.”と声をかけたりしていたほどです。でも、それを聞いた、当時の外国人は果たしてどのように思ったことか・・・。
では、なぜ英語を話すシーンのコントで“This is a pen.”が出てきたのか。これは、初めて英語を学ぶときに、最初に教科書に出てくる有名なフレーズであり、英語と言えば、“This is a pen.”だったからでしょう。
実はこの“This is a pen.”には、言語教育の世界での一つの立場が表れているのです。それは、文法(文型)を簡単なものから難しいものへと段階的に教えていこうという立場です。ですから、英語でなくても他の言語の教育においても、この立場に立てばどの教科書も似たようなタイプになるわけです。もちろん日本語教育の教科書にも“This is a pen.”タイプのものがあります。ただ、「ペン」よりも「本」が一般的であり、「これは本です」が代表的フレーズです。
今回は、この「これは本です」というフレーズについて、日本語の教育と文法の面から数回にわたり述べてみたいと思います。(吉)