日本人はどうしてうなずきやあいづちを多用するのでしょうか。例えば二人の日本人が話している時、話し手→聞き手→話し手→……といったキャッチボールのような役割分担があるのではなく、聞き手も話し手といっしょになって話を作り上げているのだという説があります。これを水谷信子先生は「共話」と呼びました。
よく、電話なのに、見えない話し相手に向かってうなずいたりお辞儀をしたりしている日本人を揶揄する言葉が他国の人から聞かれることがありますが、こういう行動が生じるのも「共話」の言語だからこそなのではないでしょうか。また、多くの国で、公共の交通機関内での携帯電話での通話が認められているのに、日本では認められていないというのも、「共話」が関係しているという考えがあります。日本語母語話者は、聞き手だからといってただ聞いているのではなく話を作り上げる役割も担っているため、誰かが携帯で話していると、車内の全く無関係な人たちも会話に参加させられているような気持ちになり、他人の会話が耳に入るのを極端に嫌うのではないか、と言うのです。確かに、「携帯電話の電源をお切りいただくか……」というアナウンスが流れるのは日本だけで、公共マナーにうるさいイメージのあるドイツでさえ、車内での携帯電話での通話は全く自由に行われています。
(こ)つづく