高千穂峰(たかちほのみね)は鹿児島県と宮崎県の県境にある山で、標高は1573メートル。この山、日本神話の中では天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫に当たる邇邇芸命(ニニギノミコト)が降臨した「天孫降臨」の舞台として登場します。そして、ニニギノミコトが高いところから千の稲穂をまいてこの地に実りをもたらしたことから高千穂峰と呼ばれるようになったと言われています。その頂上には、ニニギノミコトが突き刺したという天の逆鉾(あまのさかほこ)が刺さっていますが、1866年3月29日、龍馬はお龍とこの山に登った折に、その逆鉾を引き抜いて面白がったというエピソードがあります。姉の乙女に書き送った書状には登山道の略図が描かれ、引き抜いた逆鉾に刻まれた図柄を見て、お龍とともに「天狗の面」だと大いに笑ったと書き記しています。この逆鉾、その後の火山噴火で折れてしまい、現存する逆鉾はレプリカですが、龍馬とお龍が引き抜いた逆鉾の先の部分は、今も地中に埋められています。筆者は子供のころに登った記憶しかありませんが、途中、溶岩むき出しの急な斜面や「馬の背越え」と呼ばれる火口壁上のルートなどあり、龍馬も恐がりながらもお龍の手を引いて登ったそうです。
高千穂峰の麓にはニニギノミコトを祀る霧島神宮があります。高千穂峰登山を終えた龍馬とお龍は、1715年に再建された現在の社殿を参拝し、神宮の別当寺華林寺に宿泊したと記録に残っています。
(に)つづく