学生が苦手だと感じることの一つが、日本人との電話だという。日本語能力試験最上級レベルのN1に合格した人でも、日本人との電話はできればしたくないそうだ。電話だと相手の表情が見えず、コミュニケーションがとりにくいからだという。
先日、ある学生から、入学手続きについて大学に電話で問い合わせたいのだが、代わりに電話してくれないかと頼まれた。私はその依頼を引き受けようか迷った末、学生自身に電話させることにした。
というのも、学生は日本語学校を卒業して社会に出たら、自力で様々なタスクをこなさなければならないからだ。困った時に誰かに助けてもらえるとは限らない。
その学生は自分で電話するように促されて、不安な表情を浮かべた。そこで、私は電話をかける前にシミュレーションを行い、この通り進めれば大丈夫だと励まし、万一の時は電話を代わってあげると約束した。
いよいよ本番。学生は「発信」ボタンを押し、相手が電話に出るのを待ち、私はそばで様子を見守った。話はシミュレーション通りに進み、私が代わることなく終わった。
学生は無事に電話での問い合わせができて安心した様子だった。「先生が隣にいてくれたから、落ち着いて話すことができた」という言葉を聞き、私はこの小さな成功体験が自信につながればと願った。
学生が小さな成功体験を積み重ね、自信をもって日本で暮らしていけるように、私は今後も様々な工夫をして学生に接していこうと思う。
(濱口)