研究計画書指導の極意

日本語教師こぼれ話
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私は大学院進学コースで、日本語を教えている。そのため大学院進学指導も行う。研究計画書の添削をしたり、時には一緒に研究内容を考えたりすることもある。

学習者は海外で大学を卒業して来日している。志望する専攻は多岐にわたり、専門分野についての知識も深い。学習者から研究計画書の添削を依頼された。専門は法律。私は法律のことを知らない。では、そのような中で研究計画書をどのように添削すればいいのか。

まずは、その学習者の志望校と行きたい研究室を調べ、教授の専門を見てみる。専門の内容はさっぱりわからないながらも、キーワードは拾える。そこで、学生の研究計画書を見てみる。研究内容は、概ね研究室に合っていて、その教授のもとでちゃんと研究できそうだ。しかし、ここまで来て、文章の違和感を見つける。

「これでいいんだろうか。たしかに専門知識は十分だ。内容も詳しい、教授の研究内容も理解している。でも、なんでかな、話が入ってこない。」

ここに私達日本語教師の出番がある。私達にできることは、「なんだか変だ」、「きっと考えていることはあるんだろうけど、これじゃあ伝わりにくい」という日本語話者として抱く感覚を、言語化して伝えることだ。

細かく言えば、一つ一つの文の構造、文と文とのつながり、大きく言えば、段落の構成、段落と段落とのつながり、もっと大きく言えば根拠から結論までの流れ。わかりやすい文章にはわかりやすい理由がある。私は次のように添削に臨んでいる。

 ①論理的でわかりやすい文章の特徴を理解し、教科書等の文章を読んで分析する力を身に付ける。

 ②①に基づいて学習者の研究計画書を分析する。必要に応じて、本人に書きたかった意図を確認する。

 ③修正点とその理由を言語化し、学習者にわかりやすく伝える。

日本語教師としての研究計画書指導の極意は、ここにあると思う。 (清水)