第415回 「もの」ってなにもの?(4)

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前回、日本語母語話者が苦も無く使いこなすことができる「もの」という言葉は、外国人学習者にとっては使いこなすのが難しい言葉であるというお話をしました。しかし私たちは本当に正しく「もの」を使っているのでしょうか。やたらと「もの」を使用することに関して、違和感を覚える、ということが書かれている本がありました。確かに「もの」という言葉は便利な「もの」で、たいていの「もの」を「もの」に置き換えることができます。ただ、このように何でも「もの」に置き換えると、確かにあいまいで抽象的な物言いになってしまい、文章がすっきりしないのも確かです。また外国人にとっても、分かりにくい日本語になってしまうでしょう。

前出の本の中ではたとえば、「主観的なものとみなすべきか、客観的なものとみなすべきか、」というような記述は「主観的とみなすべきか、客観的とみなすべきか」のように「もの」を使用せずに表現できる、とあります。確かにそうです。私たちはもしかしたら「もの」を過剰に使用しているのかもしれません。

普段何気なく使用している「もの」でしたが、今回「もの」を調べることによって、その意味は深く、使用には注意が必要だということが分かりました。

「ものというものは非常に難しいもので、習得するには努力というものが必要なものである。」こんな文章を書かないように、注意をしていきたいものです。(田)

<参考文献>
・『例解学習国語辞典 第八版』金田一京助編 2005年
・『教師と学習者のための 日本語文型辞典』くろしお出版 2006年
・『日本語と時間 ~時の文法をたどる~』 藤井貞和 2010年